犬猫の下痢、これって大丈夫?見極めポイントと対応策について

2025年6月16日 最終更新日
Louis-Philippe Poitras / Unsplash

愛犬や愛猫の突然の下痢や長引く下痢に、心配になる飼い主さんも多いのではないでしょうか?実は、犬猫の下痢は軽度に見えても潜在的な健康リスクが潜んでいる場合も。
そこで、犬猫の下痢の主な原因や早期に病院につれていくべき見極めのポイント、飼い主さんが取るべき対応策まで、皆さんの愛犬・愛猫を守るための健康情報を解説します。

目次
  1. 原因を徹底解説|犬猫の下痢の主な要因
  2. 症状チェック|犬猫の下痢:軽度から重症までの見分け方と注意サイン
  3. 健康リスクを知る|犬猫の下痢が示す病気:感染症から腸疾患まで
  4. 診断の流れ|動物病院で行われる下痢検査:糞便、血液、画像診断など
  5. 治療ガイド|犬猫の下痢に対する動物病院での治療法:薬物、点滴、食事療法のポイント
  6. 自宅でできるケア|愛犬・愛猫の下痢対策:水分補給から食事管理までのポイント
  7. まとめ|犬猫の下痢:原因・症状・検査・治療、そして飼い主が取るべき最善の行動

原因を徹底解説|犬猫の下痢の主な要因

FurryFritz / PIXTA(ピクスタ)
  • 食事の急な変更や体質に合わない食餌

    犬猫の腸が慣れない食材に敏感に反応することがあります。

  • 感染症

    ウイルスや細菌感染による腸内環境の乱れ。

  • 寄生虫

    ジアルジアやトリコモナスなどの原虫、回虫や糞線虫などの線虫類、条虫類の感染によるもの。

  • アレルギーや食物不耐性

    特定の食品が下痢を引き起こすことがあります。

  • ストレスや環境変化

    犬猫の腸は環境変化などのストレスにも影響を受けやすいです。

  • 消化器疾患

    炎症性腸疾患などの消化器疾患が原因になることも。

  • 他の病気

    腎疾患や膵炎などの疾患の症状のひとつとしてみられることがあります。

症状チェック|犬猫の下痢:軽度から重症までの見分け方と注意サイン

具体的な症状を解説します。

nonpii / PIXTA(ピクスタ)

軽度から重度までの下痢の種類

便宜上軽度〜重度としていますが、最初は軽度から始まったものが経過により重度に移行していくこともあります。

軽度の下痢

  • 便の終わりだけ柔らかくなるなど、一時的に柔らかい便が出る。
  • 他の症状が伴わず、犬や猫の行動や食欲に変化が見られない。
  • 主に食事の変化や軽いストレスによるもの。

中度の下痢

  • 明確な液状の便が複数回続く。
  • 軽い嘔吐や食欲減退を伴うことがある。
  • 寄生虫感染などの感染症が原因になることが多い。

重度の下痢

  • 血液混じりまたは黒色のタール状の便。
  • 他の症状が伴わず、犬や猫の行動や食欲に変化が見られない。
  • 胆汁異常や慢性疾患、重篤な感染症が原因として挙げられる。

併発する全身症状

  • 吐き戻し(嘔吐や吐出)

    腸や胃の問題のほか、腎機能低下、中枢神経障害でも生じることがあります。

  • 食欲不振

    長引く場合は深刻な兆候。

  • 元気消失

    通常の活動量が顕著に減る。

  • 脱水症状

    下痢に水分が持っていかれてしまっていたり、食欲も減ったりしている際は水分補給が必要になることもあります。

すぐに病院へ行くべき症状

  • 繰り返す下痢軟便
  • 頻回の嘔吐がある
  • 便に血が混ざる(血便)
  • 便が黒い(黒色便)
  • 食欲や元気がない
  • 体重が減っている
  • 48時間前後、下痢が続いている

上記の症状が見られる場合は、早めに動物病院を受診することをお勧めします。早期の対応がペットの命を守る鍵となります。

健康リスクを知る|犬猫の下痢が示す病気:感染症から腸疾患まで

下痢は単なる一過性の問題ではなく、以下の病気が関与している可能性があります。

MakiEni / PIXTA(ピクスタ)

1.感染症

ウイルス性疾患

  • パルボウイルス感染症

    特に子犬に多く見られ、激しい下痢や嘔吐、発熱を伴うことがあります。

  • 猫汎白血球減少症

    激しい下痢や脱水症状を引き起こすことがある、命に関わる病気。

細菌性感染

  • サルモネラ症、カンピロバクター感染症など

    下痢だけでなく、血便が見られることがあります。

寄生虫感染

  • ジアルジア

    水状の下痢や体重減少を引き起こします。

  • 回虫や鉤虫

    特に若齢の犬や猫に多く、貧血や栄養不足も伴います。

2.消化器系の疾患

他にも色々ありますが、よくあるもの

  • 炎症性腸疾患 (IBD:犬猫の慢性的な腸の炎症状態)

    慢性的な下痢や嘔吐を引き起こします。食事療法や薬物治療が必要な場合が多いです。

  • 膵外分泌不全 (EPI:膵臓からの消化酵素が不足し、栄養吸収がうまくいかない状態)

    膵臓が消化酵素を十分に分泌できず、吸収不良により下痢が持続します。

  • 腸閉塞

    異物や腫瘍によって腸が塞がれ、頻回の嘔吐、元気消失、下痢、腹痛が発生する。

3.食物関連の問題

  • 食物アレルギー

    特定のタンパク質に対するアレルギー反応として現れ、下痢や皮膚のかゆみを伴うことがあります。

  • 食物不耐性

    食物不耐症は食物有害反応(CAFRs)の一つです。CAFRsの原因には食物アレルギー(免疫性)と食物不耐症(非免疫性)があります。食物不耐症は免疫系を介さない機序で、例えば乳糖不耐症(乳糖を分解する酵素が十分にないために消化できず下痢を起こす)などがあげられます。

4.他の全身疾患

  • 腎疾患

    慢性腎臓病などが進行すると、胃腸症状として下痢が現れることがあります。

  • 肝疾患

    肝臓の機能低下が代謝に影響を与え、消化不良や下痢を引き起こすことがあります。

  • ホルモン疾患

    例えば、アジソン病(副腎皮質機能低下症)は、下痢や嘔吐の症状を伴うことがあります。アジソン病は元気消失のほか下痢や嘔吐など、非特異的な症状が多いので、一回の診察では診断がつかないこともあります。

5.腸内の腫瘍

  • リンパ腫や他の悪性腫瘍

    初期は無症状ですが、症状が出てくると食欲不振や下痢を起こすこともあり、体重減少も生じます。早期発見と治療が重要です。

動物病院が推奨

犬猫の腸内最近を整える サプリメントとは?

プロバイオティクスの使用をご希望の場合、
まずはかかりつけの動物病院へご相談ください。

診断の流れ|動物病院で行われる下痢検査:糞便、血液、画像診断など

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動物病院では、下痢の原因を特定し、適切な治療を行うために以下のような検査が実施されます。

1.糞便検査

  • 寄生虫や細菌などの感染性微生物の有無を判断します。
  • 消化管内の感染の兆候を特定するために重要です。

2.血液検査

  • 全身の健康状態を把握し、感染症や内臓疾患の有無を調べます。
  • 貧血や炎症の有無、肝臓や腎臓の機能を評価します。

3.画像診断(レントゲン・超音波検査)

  • 消化管内の異物や腫瘍、腸の状態を確認します。
  • 特に慢性的な下痢の場合、腸の構造的な異常を発見するために有効です。

4.内視鏡検査

  • 消化管の内部を直接観察し、必要に応じて組織を採取します。
  • 炎症や腫瘍の詳細な診断に役立ちます。

治療ガイド|犬猫の下痢に対する動物病院での治療法:薬物、点滴、食事療法のポイント

Satoshi KOHNO / PIXTA(ピクスタ)

犬や猫の下痢の治療法は、原因に応じて異なります。

薬物治療

  • 下痢止め薬

    症状を緩和するために使用されます。

  • 抗菌剤

    細菌感染が原因の場合に処方されます。

  • 駆虫薬

    寄生虫が原因の場合に使用されます。

  • 整腸剤(プロバイオティクス)

    腸内環境を整え、回復を促進します。

点滴治療

脱水症状を緩和し、必要な栄養素や電解質を補給します。

食事療法

消化に優しい療法食を提案し、胃腸の負担を軽減します。

外科的処置

異物が原因の場合、手術による除去が必要になることがあります

自宅でできるケア|愛犬・愛猫の下痢対策:水分補給から食事管理までのポイント

とりがらし / PIXTA(ピクスタ)
  • 水分補給

    新鮮な水を常に提供し、電解質補給液を検討する。

  • 食事調整

    消化に優しい食事を少量ずつ与える。短期間の絶食も有効ですが、子犬など適さない動物もいるので実施する際は獣医師の指示を仰ぎましょう。

  • 休息環境

    静かな場所でストレスを軽減し、休ませる。

  • 便の観察

    色や形状、頻度を記録し、経過を確認。

  • 症状確認

    食欲や元気を観察し、脱水兆候があれば速やかに相談。

  • 清潔保持

    肛門周辺やトイレ周りを清潔に保つ。

症状が改善しない場合や血液混じりの便が見られる場合は、早めに動物病院を受診してください。

まとめ|犬猫の下痢:原因・症状・検査・治療、そして飼い主が取るべき最善の行動

下痢は軽視してはいけない重要な症状です。原因を特定し、適切な対応を行うことで、愛犬や愛猫の健康を守ることができます。飼い主の迅速かつ適切な対応が、ペットの健康維持に繋がります。

動物病院が推奨

犬猫の腸内最近を整える サプリメントとは?

プロバイオティクスの使用をご希望の場合、
まずはかかりつけの動物病院へご相談ください。

監修者プロフィール
獣医師|福地かな

獣医学部を卒業後、東京都内の動物病院で犬猫の診療に携わりました。その後、外資系製薬企業のメディカルアフェアーズ部門でMSL(Medical Science Liaison) として活動。
現在は動物病院での臨床試験や、製薬企業・ペットフード業界での業務を通じて培った知識をもとに、犬猫の「もしも」に備える中毒対策を、化学的根拠に基づきつつ、獣医師の視点でわかりやすく発信しています。