犬猫の便秘~原因・考えられる病気と治療法&家庭でできる対策~

大切な愛犬や愛猫が便秘で苦しんでいるのを見て心配になっていませんか?
排便の異常は単なる一過性の現象ではなく、場合によっては早急な病院受診が必要なサインです。
今回は犬や猫が便秘になる原因、関連する病気、動物病院での検査と治療法、そして飼い主が家庭でできる対策について、詳しく解説します。
【原因を解説】犬猫が便秘になる理由

犬や猫が便秘になる背景にはさまざまな理由が考えられます。
消化管を便が通過するのを妨げるあらゆる疾患により、便秘は生じます。慢性的な便秘は、特に猫に多いです。
また、原因を大別すると、食事によるもの、排便にかかわる神経や筋肉の疾患、物理的閉塞、疼痛(痛み)、骨盤内の狭窄(きょうさく)によるものが多いです。
不適切な食生活
まずは食事によるものです。食事内容の繊維や水分の不足が便秘を引き起こすことがあります。
運動不足やストレス
運動が不足していると腸の働きが悪くなることがあります。
入院や、トイレが汚れている場合はそこで排便を嫌がり、便秘につながることがあるため、環境の変化も重要です。
トイレが汚れていて使用を嫌がるのは、猫に多いです。
異物の誤飲
物理的閉塞のひとつ。おもちゃやその他の物を飲み込んで消化管が塞がってしまうケースです。
加齢
加齢による会陰ヘルニアも便秘を引き起こします。
会陰ヘルニアは、骨盤内の筋肉や膜が弱くなることで、直腸や脂肪、膀胱や前立腺などが肛門の近くに出てしまう疾患です。
これは去勢していないシニア期の雄犬に多く発生し、頑固な便秘を起こします。
薬物治療
長期間にわたる鎮痛剤や一部の抗菌薬の使用による腸内細菌の乱れが便秘に繋がることがあります。
内分泌の病気
甲状腺機能亢進あるいは低下症ではホルモンの異常の影響で便秘が起こります。
悪性腫瘍
物理的閉塞のひとつ。消化管に発生する腫瘍が便の通過を妨げることで便秘を起こします。
水分などが体に吸収されてより乾いた便になります。
交通事故
特に外を出る生活をする猫に多いです。交通事故などにより骨盤骨折を発症したあと、消化管に分布する神経や筋肉の機能が損なわれたり、物理的に骨盤内の空間が狭く(狭窄)なったりすることで便秘が起きてしまうことがあります。
巨大結腸症
特発性巨大結腸症の多くは猫で見られます。レントゲンでは便が詰まって拡張した結腸が見られます。
交通事故による骨盤狭窄に続いて二次的に発症することもあります。
【症状を解説】便秘の主な症状と便秘と併発しやすい症状
便秘そのものが引き起こす症状と、便秘が原因となって併発しやすい症状を解説します。

便秘そのものの症状
便秘が引き起こす症状には以下のようなものがあります。
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排便の回数が減少
通常よりも排便回数が少なくなる。
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便が硬く乾燥している
排便時に苦痛を伴う原因となる。
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排便に時間がかかる
便を出そうとする努力が見られるが、ほとんど出ない。
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排便後の残便感
まだ便が残っているような仕草や動き。
便秘に併発しやすい症状
便秘になっている犬猫に併発しやすい症状は、主に「消化器系の症状」「排泄に関する症状」「全身的な症状」の3つに分けられます。
1. 消化器系の症状
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嘔吐
腸内に便が溜まり、消化機能に影響を与えることで起こる。
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食欲不振
便秘による不快感が原因で食欲が低下。
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腹部膨満
ガスや便の溜まりによる腹部の張り。
2. 排泄に関連する症状
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血便
長期の便秘によるしぶりで肛門付近の損傷を起こした場合は鮮血が付着することがあります。
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何度も排便姿勢をとる
排便をするポーズをとりますが便はでない状況です(しぶり)。
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排便時の痛み
炎症や腸内の詰まりによる影響。
3. 全身的な症状
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倦怠感
慢性的な便秘による不調で活動性が低下。
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行動変化
トイレの周りをウロウロしたり、トイレでない場所で排便してしまうことがあります。
特に猫ではストレスが関与しており、トイレが気に入らない時や多頭飼いでお気に入りのトイレを使われた際に別の場所で排泄してしまったり、便秘になることがあります。
【要注意】すぐに動物病院へ行くべき症状チェックリスト
以下のような便秘の症状が見られた場合、早急に動物病院へ相談することをおすすめします。
- 便秘が続く場合:会陰ヘルニアや巨大結腸症、甲状腺の異常など病気が隠れていることがあります。
- 食欲不振:長期間続く食欲低下は深刻な体調不良の兆候です。
- 繰り返す嘔吐:短期間に嘔吐や吐き戻しを繰り返す場合は、腸閉塞により消化管の動きが悪くなっている可能性があります。
- 血便:排便時に血が混ざる場合は直腸付近の損傷や病気が疑われます。
- 排便が全くできない:普段の倍以上の時間が経過しても排便がない場合は、重度の便秘や閉塞の可能性があります。
- 元気や活力の低下:便秘が長引くことにより元気がなくなります。
これらの症状が見られた場合、放置すると健康状態がさらに悪化する可能性があるため、できるだけ早く獣医師の診察を受けることが重要です。
【関連疾患】便秘に伴う可能性のある病気
便秘が単なる食事やストレスなどが原因の軽度な症状ではなく、重大な病気の兆候(サイン)である場合があります。飼い主のみなさんは見逃さないようにしましょう。
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巨結腸症
腸の機能が低下し便が蓄積する疾患。
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腸閉塞や腫瘍
腸内の物理的な障害により排泄が困難になる。
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腎疾患や甲状腺機能低下症
内分泌系の問題が腸の機能異常に影響を与えることがあります。
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肛門腺疾患
排便時に痛みや困難を伴う肛門周辺の問題。
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神経学的障害
腸の働きを指示する神経系の問題による機能異常。
【診断・治療】動物病院での検査と治療方法

便秘で悩んでいる犬猫が動物病院で診断を受ける場合、動物病院では以下の方法で便秘の原因を調査し、適切な治療を行います。
検査
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身体検査
お腹の触診を行い、全体的な健康状態をチェックします。
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X線や超音波検査
腸内の状態を詳細に確認します。
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血液検査や尿検査
他の疾患の有無を調べます。
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消化管内視鏡検査
深刻な場合に消化管内部を確認。
治療
- 軟便剤や下剤の投与による便の排出を促進する。
- 食事療法で繊維豊富な食材や水分摂取を増やす。
- 浣腸や点滴による一時的な排泄の促進。
- 外科手術:深刻な場合に腸閉塞や腫瘍の除去を実施。
- プロバイオティクス:腸内環境を改善する目的で提案。
【ホームケア】飼い主が家でできる対策と予防

便秘を防ぎ、または軽度の場合には家庭で以下の対策を取ることができます。
食事を見直す
バランスの良い食事を提供し、繊維と水分の摂取を増やしてみましょう。
適切な運動と環境づくり
適切な運動を確保し、環境の変化やストレスを軽減する環境を作ってみましょう。
排便の状況や他の病気の兆候を見逃さない
これまで解説したように、便秘は重大な病気のサインである可能性があります。
排便の状況を注意深く観察し、早期兆候に気づいたら動物病院に相談する。
補助食品やサプリを活用する
腸内環境の改善や繊維不足の解消のため、市販の補助食品やサプリメントを使用することもひとつの方法です。ただし、使用の際は獣医師の指示に従いましょう。
誤飲の防止
家庭内や散歩の途中で誤飲を防ぐために安全な環境を整えたり、誤飲しないよう注意しましょう。
【まとめ】便秘対策のポイントと注意事項
便秘は重大な病気のサインであることもあります。飼い主のみなさんは、愛犬や愛猫の健康を守るために、いち早く異常に気づき早めの対策と専門的な診断を心がけましょう。
また、自分で判断できないことや疑問点、不安があれば、迷わず動物病院へ相談してください。